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【映画レビュー】search/サーチ

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ネタバレ無し

「search/サーチ」は全編PCの画面の中で展開される全く新しいサスペンス映画だ。

制限のあるシチュエーションでこそ創造性が発揮されるということを世界に知らしめた名作を紹介したい。

INDEX

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あらすじ

忽然と姿を消した16歳の女子高生マーゴット。行方不明事件として捜査が始まる。家出なのか、誘拐なのかわからないまま37時間が経過。
娘の無事を信じる父デビッドは、彼女のPCにログインしSNSにアクセスを試みる。インスタグラム、フェイスブック、ツイッター・・・。
そこに映し出されたのは、いつも明るく活発だったはずのマーゴットとはまるで別人の、自分の知らない娘の姿があったーー。

公式サイトより引用
映画『search/サーチ』 | オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ

監督

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監督は撮影当時27歳の「アニーシュ・チャガンティ」

長編作品は本作が初監督だが、1991年生まれというデジタルネイティブ世代らしい作風を遺憾なく発揮している。
今後の活躍が楽しみな監督。

登場人物

デヴィッド・キム(ジョン・チョー)

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失踪した女子高生の父親。
数年前に妻を亡くした傷を抱えながら、男手ひとつで娘を育てている。

娘とはコミュニケーションをしっかり取っているつもりが、事件の解明が進むにつれて娘とのすれ違いが多かったことが明らかになってくる。

テック系の企業でエンジニアとして働いており、各種のツールを使いこなし事件の捜査を進めていく。

マーゴット・キム(ミシェル・ラー )

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失踪した女子高生。
数年前に最愛の母親を亡くしたことで心に大きな傷を負っている。

友達は少なく、SNSで自身の心情を吐露することが多かった。

ローズマリー・ヴィック刑事(デブラ・メッシング)

失踪事件の担当刑事。

失踪した女子高生と同い年の息子がおり、デヴィッドに親身になって捜査に邁進する。

感想

PC画面だけで展開されるサスペンス映画。娘がある日突然失踪する。娘の交友関係を誰一人として知らない父親の手掛かりは娘のPCだけ。ガバガバセキュリティーを突破した父親は特定厨もビックリなテクニックで事件の全貌に迫る。物語全てが伏線で構成されていて、些細なチャットのメッセージすらも重要な意味を持っている。ラストのどんでん返しも納得の出来栄え。2018年最高の映画かもしれない。映画館でなくPCで見るべき稀有な映画。

SNSの功罪両方を描いている

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本作の衝撃的な予告編とあらすじを見るとSNSが与える社会的な悪影響を連想するだろう。
しかし、本作ではSNSの悪い面ばかりを描いているわけではない。

映画冒頭では家族共有のPCが家族のかえがえのない思い出を記録しているし、主人公親子のコミュニケーションはもっぱらチャットだ。
主人公親子のすれ違いは、母親が亡くなったことが根本的原因なのでSNSを多用したことでそうなったわけではないことがしっかり示されている。

一方で、スカイプやチャットだけではなく実際に会うことで事件の解決につながるなど、現実世界の重要性もしっかり描いている。

本作は思ったよりも中立的な作品なのだ。

制限があるからこそ創造性が発揮される

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PCの画面上のみで物語が展開する恐ろしく制限されたシチュエーションが本作の大きな特徴だ。
一見するととても不自由な設定だと思われるが、むしろSNSの画面やWebカメラそしてテレビの映像など様々なアングルから作品を捉えることで既存の作品にはない新しい構図を見ることができる作品だ。

同様に制限された状況を逆に活かすことで名作と呼ばれる映画が数多く存在する。
「SAW」も制限されたシチュエーションで、無限の創造性を発揮させた作品だった。
部屋の中に男2人と死体1つという限られた状況を活かして映画史上に残るどんでん返しをした。

シチュエーションが制限されることでむしろ創造性が発揮され、新しい試みをした結果だろう。

制限された状況こそチャンスに溢れているということを思い起こさせてくれた作品だ。

IT・テック系の企業とアジア系俳優

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本作を見ていて思ったのがアジア系俳優の多さだ。
アジア人の一家が主人公なので当たり前なのだが、そもそもアジア人一家が主人公という作品自体が珍しい。
ハリウッドでは出演する俳優の人種構成が決められているので、アジア人が出演することはあるが大抵は端役だ。

本作でアジア人一家が主人公になったのは、アメリカ国内でアジア人の影響力が増してきたことの証左かもしれない。
特に本作の舞台のアメリカ西海岸ではアジア人が多いのでその影響もあるだろう。

また、本作ではPCとスマホそしてSNSが重要な役割を果たしているので、IT・テック系企業の影響力も見えてくる。
主人公が勤めるのはIT企業だし、本作の脚本ではSNSを過剰に貶めることはしていない。
本作はIT・テック系企業の宣伝という意味合いもあるのかもしれない。