恐怖を感じない病「ウルバッハ・ビーテ病」その数少ない患者「SM-046」
恐怖を全く感じない人間がいたとしたらどうだろう。
「ウルバッハ・ビーテ病」という疾患により恐怖を感じない人々が実際にいる。
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ウルバッハ・ビーテ病
「ウルバッハ・ビーテ病」は非常に稀な遺伝性疾患だ。
1908年に発見されて以来これまで400例ほどしか報告されていない。
この疾患では、脳の一部が石灰化するのでその部位は破壊され死滅してしまう。
多くの場合、破壊されるのは恐怖を司る偏桃体という部分だ。
SM-046
「SM-046」と呼ばれる女性も「ウルバッハ・ビーテ病」の患者のひとりだ。
恐怖を感じることがない以外、彼女はごく普通の日常生活を送っている。
恐怖を感じたことがないため、彼女は恐怖という感情を説明することができない。
怯えた表情というのも理解することができない。
研究のため、ホラー映画を見せられても決して怖がることはなかった。
むしろ、後でレンタルして見たいからと研究者にタイトルを尋ねるほどだった。
ペットショップに連れていかれ、毒ヘビ・毒グモを見ても怖がらなかった。
むしろ、積極的に触りたがって止められるほどだった。
米国最恐のお化け屋敷ウェイバリーヒルズ・サナトリウムに行っても怖がることはなかった。
むしろ、お化け屋敷のスタッフに話しかけて逆に怖がらせてしまうほどだった。
彼女は何度も犯罪の被害にあっている。
最初に結婚した夫には家庭内暴力を受けていたが恐怖を感じなかった。
公園でナイフを突きつけられたり、銃で脅されたりしたこともあったが恐怖を感じたことが無かった。
彼女は人生で微塵も恐怖を感じたことが無いのだ。
そもそもなぜ人は恐怖を感じるのか
人が恐怖を感じる理由は「危険を回避するため」だ。
野生では猛獣などの危険な存在を察知した場合、捕食や攻撃を避けるために恐怖を感じて逃走する。
恐怖を感じることで生存確率が上がるのだ。
「怖いもの見たさ」というのも危険を回避するのに重要だ。
例えば野生で暗闇の中に何かの存在を察知した場合、一目散に逃走することは必ずしも正解ではない。
鳥や小動物だったら火で追い払ったほうがいいかもしれない、もしくはそこには何もなく気のせいなのかもしれない。
暗闇の中でうごめく何を凝視して対処を考える方が正解なのだ。
このように恐怖を感じることは生存する上で重要な感情であり、無くてはならないのだ。
「SM-046」が名前を公開されていない理由もそのためだ。
彼女は恐怖を感じない故に危険を回避することができない。そのため、研究機関が彼女を危険に晒さないように名前を非公開にしているのだ。